里山テレマークスキー倶楽部
Q.「テレマークスキー」って、どんなスキーですか? |
現在、お店で販売されている「テレマークスキー」とは、テレマークターンがしやすいように作られたスキーの総称です。 念のため、テレマークターンがしやすいスキーであって、テレマークターンをしなければならないスキーということではありません。スキーにはエッジがついていますから、パラレルターンもプルークボーゲンも、もちろんできます。 逆説的ですが、テレマークターンのしにくいスキーとはどんなスキーでしょうか?それはスキーブーツが完全に固定された普通のスキー、いわゆる、”アルペン”スキーです。 テレマークターンでは、まるで歩いているような独特な運動をするためにカカトが上がる必要があります。そのために足指の付け根で曲がるブーツや、ブーツを前側だけで固定できるようなビンディングが用意されています。 |
テレマークスキーはこんなスキーです |
現在の標準的なスタイル | 80年代のスタイル | 他のスキーと比較してみると | ||
3バックルのプラスチック・ブーツとケーブルビンディング。スキーはセンター幅が90mm前後の標準的なスキーです。 もちろん、新雪用であればもっと太いスキーの方がより楽しいでしょう。 |
「細板・革靴」と呼ばれて、現在でも新品の商品が供給される、ある意味、最もテレマークスキーらしいスキーです。 | 上から、 アルペンスキー(基礎スキー) テレマークスキー(プラ・ブーツ) テレマークスキー(細板・革靴) クロスカントリスキー(歩くスキー) このニュアンスの違い、感じていただけるでしょうか? |
Q.テレマークターンの特徴は? | |||
具体的にパラレルターンと姿勢の違いを比べてみましょう。 | |||
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赤い点が重心の延長線上にある荷重点だとして、この荷重点をパラレルターンは横にまたいでバランスをとり、テレマークターンは前後にまたいでバランスをとります。両足で立っていることにはどちらもかわりありません。 |
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横にバランスをとるパラレルターンは、深回りをした時の横方向の遠心力や、横滑りや急停止など板を横に向けたときに強い運動ができます。前後にバランスをとるテレマークターンでは、深雪や悪雪での走破性や、浅回りで直線的に滑った時や華奢な道具を使ったときの安定感など、前後方向の動きに強いスキーになります。 |
上の図のように、ただ立っただけの時は両足のかかとが接地しています。ここから、スキーの運動のため、軽く足首、ひざ、股関節を曲げると、パラレルは「スキーの基本姿勢」と呼ばれる姿勢になり、テレマークは自然に後ろ足のかかとが数cmほど浮いてテレマーク姿勢となる訳です。 | |||
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かかとを無理に上げようとするのではなく、まず両足でバランスをとり、足首、ひざ、股関節を曲げたら、自然に かかとが浮いてしまった、そんな意識で立つと安定した姿勢がとれます。 そこから、もっと足首、ひざ、股関節を曲げて深い姿勢をとるとかかとも大きく上がります。あくまで、かかとは運動の結果だと理解してください。テレマークの目的は前後に両足でバランスをとり続けることにあります。 |
Q.どうして、テレマークターン、なんでしょう? | |||
それは、”面白い”からです。 ...と、言ってしまっては身も蓋も無いですね。 1970年代の北米では、自然回帰の志向からクロスカントリースキーがブームとなりました。ヒッピー文化も落ち着いてきた70年代後半、ノルディックアドベンチャーまたはXCアドベンチャーとして、クロスカントリースキーで山に入り、山岳ツアーをしようとする人達が現れました。 |
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「バックカントリーを身近にしたい」とクロスカントリースキーで踏み出して行ったものの、華奢な道具では下りがどうにもなりません。軽快に、歩く、登る、は得意なのですが、滑りだしたとたん、運動靴のようなブーツと軽くて極端に細いスキーではバランスをとって立っていることすらできません。そんな時に、「過去にテレマークターンという技術があって、前後にバランスをとればクロスカントリースキーでもターンができるらしい」ということに気づいたリック・ボコベックをはじめとする米国人たちが、昔の忘れられたスキー技術、”テレマークターン”を復活させたのです。 そして1980年代に入ると、このスキー・ムーブメントはクロスカントリースキーにとどまらず、よりテレマークターンのしやすい道具として、”テレマークスキー”が開発され、現在に至っているわけです。 現在では、限りなくクロスカントリースキーに近い「BCクロカン」と呼ばれるものから、80年代スタイルの「細板革靴」そして4バックルのプラスチックブーツやパウダー向けのファットスキーまで、用途別に様々なテレマークスキーが発売されています。硬いプラスチックブーツとカービングスキーの組み合わせで、アルペンスキーにも劣らないキレのある滑走も可能となっています。 もちろん皮製のスキーブーツも現行商品として今も販売されてます。画一的に進化しないところが”テレマーク”らしさですね。他人と同じ土俵には載らないぞ、といった心意気でしょう。 |
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格好よく言えば、”オルタナティブ”! でも、こだわり過ぎると痛い人になっちゃいますからホドホドに... |
Q.「テレマーク」の語源は? | |||
ノルウエー南部の地名、”テレマーク”地方からきています。 19世紀の後半、スキーがまだアルペンスキーとかノルディックスキーとかに分かれる前のお話です。 スキーが狩猟や戦争の道具からスポーツに発展した例として、1866年にノルウエーで最初のスキー大会の記録が残っています。その当時のスキーはエッジも無くかかとも固定されておらず、ジャンプとスラロームを組み合わせて競いました。 当時のスキー大会で主流だったのがテレマーク地方のモルゲダ−ル出身のソンドレ・ノルハイムとその後継者達です。彼らはテレマークと呼ばれた前後にバランスをとるターンと、クリスチャニア(パラレルターンの原型)と呼ばれた左右にバランスをとるターンの両方の技術を使っていたそうです。ちなみにクリスチャニアもノルウエーの地名で首都オスローの旧名です。 |
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写真は野沢温泉、日本スキー博物館にて「テレマークスキー指導者より/1905年」の展示写真です。 | |||
このノルウエーのスキースタイルはヨーロッパアルプスに渡り普及しました。中でもオーストリアではマチアス・ツダルスキーがそこからアルプス地方の山岳スキーにあった技術と用具を開発しました。そして20世紀に入り、アールベルグスキー技術とハンネス・シュナイダーの出現により、アルペンスタイルのスキー技術が確立して、ターン中も常に両足を揃えてカカトをつけて滑るようになりました。これによりテレマークターンは1970年代まで忘れ去られてしまうこととなります。 ノルウエー対オーストリアという最初期の論争もこれで終了となりました。その後、”アルペンスキー”に対して、ターンをしないジャンプとクロスカントリースキーが”ノルディックスキー”と呼ばれ、ジャンプの着地姿勢にのみ、「テレマーク」姿勢という言葉が残ったようです。このへんなどは何か政治的な名残がありそうですね。(酒の肴に、ちょ〜っとだけ、邪推してみるのもありかと...) |
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